1964/伝記
日本に存在する唯一のサドの伝記。上記の三島の「サド侯爵夫人」のベースになった一冊である。サドは作品と比べてその人生は余りにもまともすぎるという意見も聞かれるが、注目すべきは、単に読書・芝居好きで教養豊かな遊び人だったサドが、長い牢獄生活の中で、己のリベルタンとしての意志を確信していく過程。そして人々の記憶からほとんど忘れられた後も、ひっそりと精神病院で惨めな余生を送らなければならなかった晩年は、思わず涙が出る。
(ザッピー浅野)