1963/ドキュメンタリー
これは、サドの"毒"が、現代の日本に具体的な社会現象として影響を与えた生々しい記録である。証人として法廷に立つ大江健三郎氏、大岡昇平氏、遠藤周作氏等の錚々たる顔ぶれによるサド論議もいいが、やはり澁澤氏の人を食ったようなというか、文面からはほとんどなげやりな証言が一番面白い。すでに天国に召され、大自然と一体化してしまっているサド本人は大空いっぱいに高笑い、彼の巨大な毒は地球上に慢性化し、この小さな日本の一角では、たかが2千部弱刷られたしがない訳本を巡って、PTAのおじさんおばさん達が尊大な国家権力の傘の下で税金の無駄遣い、そんな構図に何よりも馬鹿馬鹿しさを感じるのも当然であろう。ラストの三島由紀夫氏の「私は、澁澤氏のために怒っているので、サドのために怒っているのではない。」の言葉が全てを物語っている。
(ザッピー浅野)