岡三郎訳/国文社/1971年/研究書
以前、図書館で借りて読んだことがあるので、コメントをしておきます。
一言で言えば分厚い本です。本自体も分厚いのですが、中身も重厚で、読み通すのにくたびれますが、その分情報量も多いです。
内容は、サドの生きた18世紀の社会事情、サドの人物像、サドの作品論などが中心となっています。著者が精神医学関係の研究者であるためか病理学的見地からのアプローチが目立ちます。
個人的な感想を述べるとすれば、この本の病理学的な見地からのサド論は、ハッキリいって時代錯誤的です(20世紀初頭の著作だからしかたのないことなのですが・・・)。要するにヘンタイはビョーキだ式の古臭い論理が見え隠れします。またドイツ人である著者の18世紀フランス文化への無理解と偏見も目立ちます。
ただ資料としての情報量はかなりのものです。特に18世紀の風俗に関してはかなり幅広い記述があり、さまざまなエピソードが盛り込まれています(特に聖職者の淫行に関するパリ警察の報告書を引用した部分は興味深い)。
作品、作家論としてよりもサドの生きた時代の風俗を知るための本として一読をお勧めします。
情報提供:ラクダ男