サド、フーリエ、ロヨラ/Sade, Fourier, Loyola

ロラン・バルト著(篠田浩一郎訳 みすず書房)/Roland Barthes

1971/France/critique


呪われた作家・サド、ユートピア哲学者・フーリエ、イエズス会の聖人・ロヨラと言う、一見相容れない3人の人物を、各々の言語体系の設立者、分類家として一冊に論じた名著。バルトの言葉を借りて説明すると、「分類家とはここでは言語学的な意味で、さまざまの言語的単位から同一のものを類(クラス)として分類する操作を行うものであり、言語体系設立者とは、こうして分類された諸要素を首尾一貫した有機的体系(システム)にまで練りあげるものである。有機的な、とはある一要素が欠けた場合、その体系全体に変化が起こるという意味である。」 言語学、記号学、構造主義などの知識がないとこの本の意義性は把握しずらいかも知れないが、サド文学を考察する上で重要な要点が含まれている。同時代の人間達がサドを迫害した、現実社会をありのままに表現するそれまでの文学の概念から、サド文学の閉鎖された言語体系のなかに孤立するサド的社会の論説へ。サド文学を読み、「人間の本質に宿る自然、悪、欲望」等のありきたりの見地でしか語れなかった人達の概念を、イデオロジカルな解釈にまで改変するのに有意義な書物と言えよう。

(ザッピー浅野)


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