友成純一

1954〜健在


友成純一氏の文章というと、どうしても汚いものというイメージがついて回るが、氏の本当の才能が発揮されたのは映画評論であった。ホラー映画、アニメを中心に、「ビデオファン」(白夜書房・廃刊)他、数々の映画・コミック雑誌、映画のパンフレットに掲載された氏の評論の鋭い着眼点。特にトビーフーパー論、デビッドリンチ論などの傑作に代表される深い思い入れとこだわりに満ちた筆づかいは、映画評論という枠組みを越えたひとつのドラマであった。後の氏の小説が、本編そのものよりも、後書きの方に評価が集まることがしばしばあったのも、そのエッセイストとしての才能が抜きんでていたことの証拠にほかならない。映画をたった三本しか見たことのない映画監督について長い文章を書くときも、大風呂敷を積み重ね、その人間像にドラマという生命を与えてしまう氏の筆のマジックに、影響を受けた文章化が何人いるか、想像に難くない。


ryou.gif陵辱の魔界 (1985)
後にも先にも友成純一氏のこれが最高傑作。狂気の人体実験、狂気のクライマックス。異常を極めた空前絶後の設定、信じられないほどの凄惨な世界の向こうに現れる崇高な新境地。氏が神になった瞬間であった。


kemono.gif獣儀式 (1986)
私が初めて読んだ氏の小説である。これを読んで、次に「陵辱の魔界」を読んで、何でこの作家を宇宙最高の文豪だと思わないわけがあるものか。氏が後に百の駄作を書こうが、千の愚作を書こうが、この2作品の感動を差し引いて余って有り余るものがある。人類始まって以来の凄惨な物語は、作品中虐殺とスプラッターを繰り返し、ついにはクライマックスで巨大なミートボールと化す。そしてたどり着くは、やっぱり神の領域であった。


illusion.gif内臓幻想 (1993)
氏の文筆家としての才能を見るにつけ、ぜひ氏のエッセイ集というものの出版を心待ちにしていた私であったが、その望みかなっての傑作ホラー随筆集の誕生である。エッセイ集第一弾の「ローリング・ロンドン」もよかったが、こちらはいよいよ氏の本領発揮という感じ。私が氏を尊敬するようになったきっかけ「トビーフーパー/呪縛と開放」も収録。勿論、超オススメ。ちなみに私は以前、氏に「僕は友成さんの評論を読んで、嫌いだったトビーフーパーが大好きになりました」という内容の手紙を送ったことがあるが、氏が某小説の後書きで言及しているファンの手紙というのは、あの手紙のことだったのではないか、とちらっと思ったことがある。


かつて、私は氏のトビーフーパー論を読んで感動を受け、「よし、自分は将来世に出て、この人に会って、師弟関係の許可をもらおう」とまで思ったことがあった。あれは今から8年前。我が19の春である。近頃余り目立った活躍のない友成氏であるが、また再び復活して欲しいものだ。

(ザッピー浅野)


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